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スタッフブログ

西日本シティ銀行の情報漏洩問題について

こんにちは

公認会計士・税理士の富村亮超です。

今日は、元銀行員のはしくれとして、SNSでの情報漏洩問題について書こうと思います。

 

今回の騒ぎの元になったBeRealというアプリですが、2年ほど前、中学生のいとこに、今流行っているアプリを聞いたら、それを教えてくれました。

「リアルを切り取る」がテーマの若者向けのSNSです。

根本的な設計思想としては、インスタの逆張り

キラキラした整った写真ではなく、寝起きとか、歯磨き中みたいなゆるい写真でつながる、肩ひじ張らないSNSなのです。

アプリから通知が来て、数分以内に自分の周囲の写真を撮ってアップロードするミッションが課せられるらしく、アップが遅れると、「何分遅れ」みたいなのが晒されてしまい、恥ずかしいらしいです。

恥ずかしいか?と思いますけどね。

通知に毎回反応できる人の方が、暇人っぽくて恥ずかしい気がしますが、、、

私もオジになったということなのでしょう。


そもそも、銀行によっては私用携帯の営業店内での持ち込み、使用は禁止のとこも多いみたいですが

一方で、持ち込みについては特に制限のない銀行も多いようです。

今回のBeRealの一件も、結局、何がルールとしてやってはいけないかを分かっていないのが、根本的な原因でしかないんですよね。

僕が携帯に仮にBeRealを入れていたとしても、銀行の中の写真を撮ってアップロードするなんてことは流石に絶対にしないと断言できます。


では、これが令和の新卒がやばいのか?というと

そういうわけでもなく、歴史が繰り返されていてその横にはいつも、その時々で流行っていたツールがあった、というだけな気がします。

 

バイトテロ→Twitter

下着ユニバ事件→インスタ

スシロー醤油ぺろぺろ事件→インスタのストーリーからTwitter拡散

西日本シティ情報漏洩事件→BeReal

 

BeRealの「リアルを切り取る」という設計思想の特殊性も一部あるとは思いますが

これを「令和の新卒は・・・」で終わらせるのはあまり賛同できません。

 

平成時代も十分やばかったのでは?と思うからです。


Winnyに代表されるP2Pアプリケーションをご存じでしょうか。

P2Pは「Peer-to-Peer(ピア・ツー・ピア)」の略で、利用者同士のパソコンを直接つないでファイルをやり取りする仕組みです。

通常のWebサイト(YouTubeやAmazon等)では、中央のサーバーに全データが置かれていて、利用者はそこからダウンロードします。これをクライアント・サーバー型と呼びます。

一方、P2Pでは中央サーバーが存在せず、参加している利用者一人ひとりが「サーバー」と「利用者」の両方の役割を果たします。

 

ブロックチェーン技術の始祖のような、ものすごく近代的な設計思想なのですが、そもそもP2Pの仕組みを理解して使っている人が少なかったです。

ちなみに、平成中期当時音楽ファイルや動画ファイルのダウンロードはそれ自体は私的使用目的の複製として適法でした(著作権法30条)。

しかし、P2Pの仕組上、ダウンロードしたファイルは自動的に他のノードに送信する仕組みだったため、事実上アップロード行為も行っていたことになり、結局、ダウンロードする行為も著作権法上の違法行為に実質つながる行為でした。

ですが、当時それを利用していた多くのユーザーのうち、それを何割が認識していたのか、あるいは少なからず認識していたような気がしますが、あまりにユーザーが多いので、全員は逮捕されないだろう(逮捕されない期待値効用が上回った)、逮捕事例もない時代は特に、そういう空気感があった気がします。

 

当時、自分は中学生くらいでしたが、もし業務用のPCでWinnyを入れてるやつがいたら速攻で呼び出し激詰め案件だったと思います。


、、、と、ここまで偉そうに書いておきながら何ですが、

実は私自身、中学生の頃にニコニコ動画から音楽ファイルをダウンロードしていました。

動画そのもの、あるいは動画から音声だけ抜き出すツールみたいなのがあって、好きな曲をmp3にしてiPodに入れていた記憶があります。

ちなみに当時、ニコニコ動画にアップされている音楽の多くは著作権者の許諾を得ていない違法アップロードでした(はい)。

それでも、平成中期〜後期当時は、ダウンロード行為自体は著作権法30条の「私的使用目的の複製」として適法でした。

しかし、令和3年(2021年)の著作権法改正により、違法アップロードと知りながら音楽・映像をダウンロードする行為には刑事罰が課されるようになっています。

つまり、当時の私と同じことを今やれば、明確に違法行為です。

要するに、「法律が動いていなかったから、たまたま捕まらなかっただけ」というのが正確な評価ということになります。


ここでお気づきかと思うのですが、

平成のWinnyユーザーも、

令和のBeReal新卒も、

そして当時中学生だった私も、

実は構造的にはほぼ同じことをしているんですよね。

「全員は逮捕されないだろう」 「自分が炎上する側になるはずがない」 「これくらいはバレないだろう」

リスクと得られる利益を天秤にかけて、「期待効用」が割に合うと判断して行動しているわけです。

これはゲーム理論でよく出てくる話で、別に現代の若者の頭がおかしくなったわけではなく、人間はだいたいいつも、こういう計算をしながら生きています。


ただ、令和になって決定的に変わったことが1つあります。

それは、情報の拡散速度と、証拠の永続性が、平成とは桁違いになっているということです。

平成のP2Pは、ユーザー数が膨大だったので「自分まで捜査の手は来ないだろう」という計算が、ある意味では合理的でした。

しかし令和のSNSは、1人の投稿が一晩で全国どころか全世界に拡散します。

しかもスクショで永久に保存されます。

つまり、「平成と同じ感覚で期待効用を計算していると、リスク側の数値が爆発的に膨らんでいて、計算結果が完全に狂う」という時代になっているわけです。


ただ、もう一つ厄介な要素があります。

それは、「誰もやっていないことをやると、希少性が上がってリターンも跳ね上がる」という構造です。

SNSは注目という有限資源をめぐる競争です。みんなと同じ投稿をしていても誰も見てくれない。

だから、過激なこと、誰もやらないことをやることで、希少性プレミアムが乗って注目が爆発的に増える、という現象が起きます。

迷惑系YouTuberや炎上商法が後を絶たないのも、これが理由です。

つまり、安全なネタはとっくに掘り尽くされていて、残っているのは危険なネタばかり

危険であればあるほどリターンが大きい、という構造が生まれてしまっているわけです。

これは経済学でいうリスクプレミアム、生物学でいうハンディキャップ原理(クジャクの羽みたいなものですね)とも通じる話で、別にSNSに限らず、人間社会で繰り返し観察されてきた現象です。


結局、技術が変わってもツールが変わっても、人間がやらかすメカニズムは、あまり変わらないものです。

平成にはWinnyがあり、令和にはBeRealがあり、その間にはTwitterやインスタがあった。

でも、根っこにあるのは「ルールが分かっていない」「期待効用の計算が雑」「やばいネタほど注目される」という、わりとシンプルな問題なんですよね。

だからこそ、組織を預かる側の人間がやるべきことは、技術の進化を追いかけることよりも、ルールの言語化と、期待効用の設計という、地味で愚直な作業なのかもしれません。