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相続って何から始めればいいの?

こんにちは。税理士の武尾です。

今週から、週一で相続税のコラムを掲載していきますので、よろしくお願いいたします。

相続が始まって、親の名義になっている財産をどうすればいいのか、色々とお困りではないでしょうか。また、「相続税」がかかるのか不安に思われていませんか。中には、固定資産税の納税通知が届いてビックリして、それを相続税と勘違いされていたお客様もいらっしゃいました。

相続手続きですることは、簡単には次のようなものです。

 ① 亡くなった方の財産を全て洗い出すこと

 ② 相続人を特定すること

 ③ 遺言書がない場合、誰がどの財産を取得するか話し合い、「遺産分割協議書」を作成すること

 ④ 名義変更に必要な「戸籍謄本」、「印鑑証明書」を市役所で取得すること

 ⑤ 土地建物の住所を管轄する法務局で、所有権移転登記をすること

 ⑥ 銀行や郵便局で、預貯金の解約払戻手続きをすること

 ⑦ 保険会社に連絡をして死亡保険金の支払請求をすること

 ⑧ 亡くなった方名義のクレジットカード、電気代、水道代、電話代などの解約手続き

 ⑨ 年金の受給停止の手続き、固定資産税の代表相続人指定届などの提出

 ⑩ 相続税を計算し、亡くなられた日の翌日から10ヶ月以内に税務署に申告と納税を行うこと

ほどんどの方は、これぐらいでしょうか。

ただし、亡くなられた方に、一か所以上の年金収入があったり、事業所得や不動産所得、土地建物の売却収入などがあった場合は、「準確定申告」と言って、その年の1月1日から亡くなられた日までの所得税を申告・納税しなければなりません。これは、亡くなられた日の翌日から4ヶ月以内が期限になります。

また、収益物件(賃貸マンションやアパート)を所有されていた方は、賃借人との契約書のまき直しも必要です。株式を保有されていた場合は、株式の移管手続きも必要です。株式を換金して、現金で取得する場合は、売却益について所得税も計算しなくてはなりません。不動産を換金して分割する場合も同様です。

と、まあまあ財産をお持ちの方の場合は、手続きも多くなります。信託銀行などは、まとめて手続きを代行してくれますが、その手数料もかなり多額になります。最低150万円位のところが多いですね。ただし、相続税の税理士報酬は含まれていないようです。

「亡くなった方の財産を洗い出す」には何をすれば良いか?

<プラスの財産>

土地・建物 ・・・ 毎年、市役所から郵送されてく固定資産税の課税明細書を見れば、亡くなられた方の所有している不動産が分かります。ただし、共有名義になっている不動産や、固定資産税が非課税の不動産(保安林など)は一部記載されていない場合があるので、市役所で「土地建物名寄帳」を請求すると、その市に存在する全ての不動産を調べることができます。ただし、居住していた市町村以外に相続人も把握していない不動産があった場合は、注意が必要です。課税明細書が保管されていれば良いですが、ないときは昔住んでいた市町村に問い合わせるなどしてみましょう。持分や権利関係を確認するために、法務局で不動産登記簿を取得することも必要です。

預金・貯金 ・・・ ご自宅に預金通帳がないか探しましょう。その後、亡くなった方が利用していた取引銀行に出向いて、預金残高証明書を取得します。貸金庫や借入金がかなったかも確認します。利用していた金融機関が分からないときは、地域の金融機関や都市銀行を訪ねてみましょう。

株券・国債 ・・・ ご自宅に証券会社からの取引報告書がないか探しましょう。その後、亡くなった方が利用していた証券会社に出向いて株式残高証明書を取得します。

保険・共済 ・・・ ご自宅に保険証券、契約書がないか探しましょう。死亡保険金の受取人が指定されているときは、保険会社に連絡して、支払請求の手続きができます。受取人が指定されていない場合や、被保険者が亡くなった方ではない場合は、相続の手続きが必要です。また、損害保険でも満期型のもの(JAの建物更生共済)は財産価値があります。

動産・家財 ・・・ 自動車、船舶、貴金属、美術品、骨董品、電話加入権、著作権、ゴルフ会員権、リゾート施設利用権

事業用財産 ・・・ 個人で商売をされていた方は、亡くなる直前の確定申告書を調べます。決算書の貸借対照表の資産に記載されている科目を確認します。売掛金、商品、貸付金、機械装置、工具器具備品などが財産になります。

不動産貸付 ・・・ 賃貸物件のオーナーであった方は、亡くなる直前の確定申告書を調べます。決算書の貸借対照表に記載されている未収賃料などが財産になります。

自社の株式 ・・・ 上場企業以外の株主であった方は、保有株式の価値を算定します。非上場株式の評価は、相続税法や財産評価基本通達を基に複雑な計算が必要ですので、評価は税理士にお任せください。

仏壇・墓石 ・・・ お墓や仏具は、相続税を計算するうえでは除外されます。しかし、誰が引き継ぐかを決めるために、どこに先祖のお墓があるかを調べておくのは有用です。

 

<マイナスの財産=債務>

借金・ローン ・・・ 取引金融機関で残高証明書を取得します。消費者金融などからの借入がないかも調べましょう。

未払代金  ・・・ 亡くなった後に支払った、家賃、水道光熱費、病院代、固定資産税、所得税、住民税、介護施設の利用料、成年後見人報酬、物品の購入代金について、請求書や預金からの引き落としがないか確認しましょう。

事業用負債 ・・・ 亡くなった方の確定申告書の貸借対照表の負債を確認してください。

不動産貸付 ・・・ 賃借人から預かった敷金や保証金は債務になります。

未払いの仏壇代・墓石代・永代供養料 ・・・相続税を計算するうえでは、これらの債務は控除されませんが、相続人で誰が負担するか話し合うために、調べておきましょう。

葬儀費用一切 ・・・ 相続税を計算するうえで控除されますので、請求書や領収書は残しておき、お布施はいつ、どこに支払ったかメモしておきましょう。

<注意>

市役所や金融機関で証明書を取得するには、相続人関係を示す戸籍や身分証明、印鑑証明書が必要な場合があります。

また、相続税の申告には、亡くなった日の日付の証明が必要です。

 

まずは、これらの財産と債務を、エクセルなどを使って一覧表にまとめて下さい。死亡日時点に残っている財産が把握できます。そこに、亡くなった方から生前にもらった物(不動産や金銭)を記載しておかれると、遺産分割のときの話し合いがしやすくなります。

相続財産の調べ方は、こんなところです。何が大変かと言うと、金融機関です。相続人関係が複雑でない場合は、戸籍と身分証明書と実印と印鑑証明を持っていけば、それなりにスムーズに手続きが進みますが、なかなか慎重な金融機関もあります。まあ、昔に比べて、色々と難しい時代なので、それも致し方ないというところですね。

次回は、「相続人の特定」について、記載いたします。

-以上-