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Freee対マネフォ、AIブームのシェア戦争
こんにちは、AIウォッチャーの公認会計士・税理士の富村亮超です。
前回、記帳代行についての記事を書きましたが
今、会計業界では会計ソフトのシェア争いが激化しているのをご存じでしょうか。
今回は、私がウォッチしている限りで、その流れの概要を整理していきます。
1.一番先端を行ってる感を出すのがうまいfreee
というより、実際に最先端を行っています。
事の発端は、freeeがMCP連携を発表した3月です。
まず、MCP連携ってなんやねんという方のために簡単にお伝えすると=AIと会計ソフトを簡単につなげることができるようになったイメージです。
詳細省略しますが、これまで、つよつよエンジニアしかつなげられない状態だったのが、MCPの開放により私のような文系出身でも30分あれば初期設定が完了できるようになりました。
いうまでもなく、税理士・会計士業界は文系が多いです。
したがって、RPA、あるいはマクロなどの自社業務の自動化に対しては比較的縁遠い母集団でした。
こういった中で、文系でも扱えるITシステムの進歩は、これまでのもっちゃりとした労働集約的な文系人生に大きく響く夢のシステムに思えたのです。
その中で、あるXの投稿が大いにバズりました。freee×claude codeで1人で60社の記帳代行を回すというセンセーショナルな投稿でした。
税理士業界は、これについて賛否ありつつも、自分もそちら側へいけるのではないか?という希望につつまれました。
と同時に、とにかくバズりたい税理士が
(名前)×AI×税理士
(名前)×freee税理士
のように、名前を変えてとにかく情報商材屋のごとくfreeeのAI連携がいかにすごいかを喧伝して回り、バズがバズを呼ぶ期間が2週間くらい続きました。
この間に、一定のAIリテラシーを有している個人事務所でのfreeeへの移行・学習ニーズが急速に高まりました。
情報感度の高いお客様へのウケがよく、「freee×AIについて語れない」ということそのものが、時代についてきてない感を出してしまうからです。
まぁ実際、今どきfreeeを触ったことがないというのは、少し見栄えが悪いように思います。
2.なんか半歩遅い印象を抱かせてしまうマネーフォワード
そして、マネーフォワードが2週間遅れで、すなわちイノベーター層がfreeeに狩りつくされたあとにMCP連携の利用拡大を発表しました。
利用拡大というのは、実はマネーフォワードもMCP連携機能はこっそりリリースしていたのですが
それが、プラチナ会員限定解放という謎施策でした。
プラチナ会員のなかで情報感度が高くITリテラシーが高い顧客のみに提供されていたサービスだったため、あまりにも一部にしかリーチしていなかったのが実態です。
内部で様々な事情があったことは推察されますが、マーケティング戦略として大きく後れを取り
AI記帳と言えばfreeeというイメージを覆すには、あまりにもバズらせ力が足りていませんでした。したがって、「なんかそれfreeeで見たな感」をどうしてもぬぐえませんでした。
そして、実際マネーフォワードのMCP連携は限定的な機能でリリースされています。
これは私の想像ですが、あまりにAI記帳市場をfreeeに荒らされているので、機能的に少し足りてなくてもリリースせざるを得なくなったんだと思います。
3.我関せず、弥生やTKC
この2社については戦略として弥生は、中小企業の中でもクラウド会計の最先端を行きたいわけではなく、
TKCは申告システムとのつながりを重視しているので、記帳のあとの工程に強みがあります。
確かに、下手に後追いして劣化になるくらいなら、今のポジションをキープした方が確かにいい気がします。
4.AI記帳は本当にゲームチェンジャーなのか?
答えはYESです。
ただ実は、ややこしいことに、このゲームチェンジは3つのゲームチェンジが絡み合っているという状態なのです。
私の専門であるゲーム理論的に解説すると、今起こっているゲームは3つです。
①AIベースの記帳ができるというエサでの「会計ソフトシェア獲得ゲーム」
②会計シェア獲得ゲームに乗った「AIに強い税理士のポジション獲得ゲーム」
③AIベース記帳VSそれ以外の記帳、どちらが優位かゲーム
一見すると、誰も③しか語りません。ですが、裏ではSaaSの争いとX上の誰がバズるかというゲームが日夜行われており、①と②の盛り上がりには正の相関があるので、会計SaaS業界と税理士業界が暗に示し合わせて盛り上げまくるというのが現在の構図です。
ぶっちゃけ、エンドユーザーにとって重要なのは、③だけです。
5.それぞれの見解
最後に、①、②、③についてそれぞれ私の見解を述べておきます。
①会計ソフトについては現状先を走っている機能の多さはfreeeに軍配が上がるが、マネーフォワードの開発が追い付いてさえしまえば、ことMCP関連において製品としての差別化は薄まる。
したがって、徐々に従来の顧客属性と同じ分布になると思われるが、情報感度の高い顧客のシェア取り合いを制せなかった方は、今後もバズ争いで勝てない可能性が高い。
=バズらせ力のある税理士の囲い込み勝負において今圧倒的にfreeeが優勢。
②AIに強い税理士ポジションについては、情報商材屋が比較的少ないのがバッジ持ちのいいところ。元来真面目な人ばかりなので、虚業バズみたいのではなく、ちゃんと有益な情報を配ってる人が多い。
ただ、ゴリゴリのスクレイピングを堂々と喧伝していたり、セキュリティやばいだろそれ、という「にわかIT奴」を量産しているので、地力がないとむしろ炎上する可能性がある。
=文系は、ITリテラシーを高めつつ外野から見守るのが吉。
③AIはまだ全然成長するし、freeeマネフォもまだAIを持て余している感があるので開発余地は大きい。
したがって、税理士はAI記帳は「最低限のスキル」として一刻も早く習得すべき。
一方で、銀行勘定やクレジットの連携や、証憑読み込み、自動仕訳登録機能(もともと)でいいじゃんというのは確かにあると思う。これは現場の税理士が何人もそう言っているし、賛成。
AIは出力にぶれがあるし、コンテキストが長くなったときにバグり始めるので自分一人がマスターするならAIでいいと思うが、再現性が高いのは非AIと思う。それに、アンソロピックは政治的に不安定なので、geminiも十分にAI記帳に対応できるまでは、フルベットは危険。
=でも、使ってみて楽しいし、今後まだ伸びると思うのでAI記帳にも当然ベット。フルベットはしない。他の会計ソフトもほかのAIも並行ですべて触って選んでみる。
以上です。今後も、このテーマは続けて語っていきたいところです。
