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会計データの比較可能性v3.0
こんにちは、公認会計士の富村亮超です。
会計の世界には昔から「比較可能性」という、会計というものをこういう方向で組み立てようねという“概念”があります。
企業同士(横の比較可能性)、同じ企業の過去の数値と今の数値(縦の比較可能性)を比べられないと、財務情報って意味をなさないよね、という当たり前の話。
ただ──
ここ数年、ビッグデータの活用がお題目になっている現状
この“当たり前”の基準を上げていかないといけないのでは?というお話。
■会社ごとに「給料」「給与」「給料手当」…いや、どれやねん問題
例えば、人件費ひとつ見ても、
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給与
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給料
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給料手当
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職員給
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従業員関連費
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人件費(ざっくり)
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役員報酬とセット
など、もはや“なんとなくの文化”がそのまま科目名になっている世界が広がっています。
人間なら読めるんですよ。
「だいたい同じ意味ね」って、行間で勝手に吸収できる。
ただし。
AIは行間を読まない。
AIは「構造」しか見てない。
そして、構造がバラバラだと、AIは正しく比較できない。
ここに、AI時代ならではの“比較可能性の本質的な障害物”があります。
■従来の比較可能性は「人間向け」だった
もともと財務諸表というのは、人間が読むものとして作られています。
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人間は文脈を読める
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人間は慣習も知っている
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人間は多少のズレを脳内で補正できる
だから、科目の書きぶりが多少違ってもなんとかなりました。
しかし、AIは違います。
AIは曖昧さを“ノイズ”として扱う。
比較可能性を阻害する最大の敵が、いまや“企業ごとの自由すぎる科目体系”になってきているのでは。
ここが面白いポイントで、
「比較可能性」の解釈が、人間の読解力ではなくAIの解析能力に軸足を移しつつある、という現象なのです。
■財務諸表は、各社が“方言”で話している
会計というのは標準化された言語のはずなのに、実際には方言だらけです。
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大阪企業「給料やで」
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東京企業「給与」
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老舗企業「職員給」
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IT企業「従業員コスト」
AIはきっとこう思っている。
「いや、統一してくれ。意味は全部同じやから。」
しかし現実は、企業文化・歴史・担当者のクセがそのまま勘定科目に刻まれている。
そしてそれを、AIに読み解けというのは、まあまあ無茶ぶりです。
■AI時代の比較可能性=“タグで統一する世界”
これから先の会計は、私は次の方向に動くと見ています。
① 科目名より「統一タグ」の時代になる
給料/給与/給料手当
→ #EmployeeCompensation
福利厚生/法定福利費
→ #EmployeeBenefits
外注費
→ #OutsourcingCost
企業がどんな言葉で書いても、タグさえ揃っていれば比較できる。
② XBRLのタクソノミーが、より“拘束力を持つ”
現状、企業独自タグが散乱しており比較にならない。
AI前提の基準なら、ここは手を入れないといけない。
③ 最終的にはAIが“自動タグ付け”する
もっとAIが賢くなれば補正を勝手にかけてくれるようになるかもしれません、むしろこっちの方が早いかも?
つまり、
企業がどう書こうが、AIが勝手に統一科目に整形してしまう世界。
ただし、現状レベルであればタグの標準体系が不十分すぎて、AI任せにすると逆に危険かなぁと思います。
だから今は「構造化のルール作り」が必要。
■結論:「比較可能性」はAIのための概念に変わった
ここまでをまとめると、
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比較可能性の目的は“意思決定のための比較”
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かつての読者は人間だった
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しかしこれからの読者はAI
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よって、“人間が読める科目名”より“AIが読める構造”の方が重要になる
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企業ごとの科目の自由度は、AI時代にはむしろ弊害になる
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会計の標準化は「文言の統一」から「タグの統一」にシフトする
つまり、
AI時代の会計実務は、「書き方の美しさ」より「構造の整合性」が問われる。
そして、これは単なる技術論ではなく、
“財務諸表というメディアの読者が変わった”ことによるパラダイムシフトです。
■締め:AIが読む財務諸表の時代へ
財務諸表を読むのが人間だけだった時代は、もう終わりつつあります。
これからの会計は、AIの解析を前提に設計される。
そのとき、企業ごとの“方言科目”は、AIの世界における最大級のノイズです。
「AIに読んでもらえる財務諸表」へとアップデートする。
これが、比較可能性の新しい意味だと私は考えています。
